マスク消毒器-試作の前段階

注意
筆者には医学的な知識があるわけではありません。
またデータや英文の理解に誤りがある可能性もあります。
あくまで素人が情報を集めつつ方向性を検討しているものであり、その結果(有効性)は保証できないことにご注意ください。
また、非常に興味深いデータが記載されていますので、ぜひ各リンク先の資料も参照されることをお勧めします。

マスク消毒器を試作してみることに

やりかけの工作がいくつもあるのは承知の上で、今回も新しいことをやっていきます。

新型コロナウイルスの蔓延によるマスク不足は続いています。
いつになったら品薄が解消するかわからないため、マスク1枚につき2,3回使用することを想定して、消毒する機械を作ってみようと思います。
マスク以外にも身の回りの品の消毒に使えるでしょうし、UVCライトだけ使用する場合には3Dプリンターで作成したものの二次硬化に使用できるかもしれません。

はじめに

こちらの記事を読んだことが出発点となっています。

まずは消毒方法を考える

実現可能な消毒方法について

参考 各種滅菌法・消毒法の概要アズワン

個人で実現できる現実的な消毒方法としては煮沸消毒乾熱滅菌紫外線殺菌になりそうです。

煮沸する場合はその後乾燥させる必要があり、一般家庭環境を想定すると、乾燥している間に空気中の塵・埃がついてしまう可能性もあるでしょう。
殺菌装置に加えて+αするイメージで煮沸消毒を行うのであれば良いと思いますが、殺菌装置の仕組みとして煮沸消毒を選ぶのは避けた方がよいと考えました。

そこで、熱と紫外線による殺菌について調べていくことにします。

参考 消毒・滅菌の概要(pdf)日本医師会

なお、こちらの記載に倣って以後「消毒」と表現することにします。

熱による消毒について

情報①

参考 新型コロナ、サージカルマスクの表面で7日間感染力を示す日経Gooday
抜粋①
新型コロナウイルスを含むウイルス輸送液(現在、PCR検査を行うために綿棒を使って採取した標本は、この液に綿棒ごと浸した状態で検査施設まで輸送されている)を密閉容器に入れて、4℃、22℃、37℃、56℃、70℃の環境下で最長14日間保管しました。それぞれ、1分後、5分後、10分後、30分後、1時間後、3時間後、6時間後、12時間後、1日後、2日後、4日後、7日後、14日後の時点で、感染価を測定しました。

 その結果、新型コロナウイルスは、4℃では高い安定性を示し、感染価は14日後までほとんど変化しませんでした。22℃では7日後まで、37℃では24時間後まで感染力を維持していましたが、56℃では30分後70℃では5分後には、感染性のあるウイルスが検出できなくなりました。

抜粋②
最後に、環境のpHとの関係を検討しました。室温22℃で、pH3から10までの溶液にウイルスを加えて、60分後に感染価を調べたところ、どのpHでもウイルスは感染力を維持していました。

情報②

参考 UV-C / Heat, Arduino controlled, face-mask disinfecting device for Coronavirus (SARS-CoV-2) needlab
抜粋
Furthermore, a recent study showed that SARS-CoV-2 lost all detectable infectivity after being incubated at 56°C for 30 min, or 70°C for 5 min

お!同じ結論になっているぞ、と思ったのですが、それもそのはず。この2つの記事では同じ論文を参照していたのです。

参考 Stability of SARS-CoV-2 in different environmental conditionsthelancet.com

こちらのリンク先からpdfファイルが2つダウンロードでき、様々な温度下での安定性と、様々な表面上での安定性様々な消毒剤の殺ウイルス効果を確認することができます。

今回の工作に関係するところとしては、熱による消毒は有効(56℃30分間。おそらく湿熱)ということがわかりました。

情報③

参考 HOWTO: Low Cost Heat Sterilizer for Virus InactivationHACKERFARM

白熱電球の熱を利用した低価格なウイルス不活化システムの例です。
2020/04/18にUpdateされた情報として、以下のリンクが掲載されています。

参考 Assessment of N95 respirator decontamination and re-use for SARS-CoV-2medRxiv

PDFファイルを参照すると、紫外線照射、70℃乾熱、70%エタノール、気化過酸化水素によるデータが掲載されています。

この中でも重要なのが70℃乾熱のデータです。乾熱殺菌のデータはとても少ないようなのです。
乾熱70℃の場合、新型コロナウイルスが1/1000になるまでの所要時間(中央値)は46.3分。
97.5%で53.9分ですから、60分間ほど見ておいた方がよさそうです。
新型コロナウイルスはインフルエンザウイルス等よりも熱に強いのかもしれません。

紫外線による消毒について

理容室の櫛やハサミの殺菌、病院のスリッパ殺菌などでも見かける紫外線消毒についても調べてみます。

まず、紫外線について簡単に触れておこうと思います。

参考 紫外線Wikipedia

Wikipediaの「紫外線の波長ごとの特徴」という項目にまとめられていますが、近紫外線は波長によってUV-A, UV-B, UV-Cの3種類に分類されています。
殺菌灯に使用されるのはUV-C(波長 200–280 nm)のライトです。
通販サイトで紫外線殺菌灯を探すと、UV-CあるいはUVCと表記されているのに気づくと思います。

参考 UVGI. Germicidal effect of UVC lightneedlab
抜粋①
Single-stranded RNA (ssRNA) viruses, such as SARS-CoV-2, are particularly vulnerable to UVC irradiation, requiring a dosage of ~2-5 mJ/cm2 (3)⁠. Most commercially available UVC light-bulbs are capable of providing the necessary dosage in relatively short times. However, some important technical considerations must be taken into account during the design of a UV germicidal device.

The UV dosage is the product between the intensity (mW/cm2) and the exposure time (s). Hence, it depends on the power of the light-bulb, the surface of exposure, and the time. The exposure surface itself depends on the shape of the light-bulb and the distance from the sample to the emission source.

  • SARS-CoV-2などの一本鎖RNA(ssRNA)ウイルスはUVC照射に対して特に脆弱であり2〜5 mJ / cm2の線量を必要とする
  • 市販されているほとんどのUVC電球は、比較的短時間で必要な線量を提供することができる
  • UV線量は、強度(mW/cm2)と露光時間(s)の間の積
  • 電球のパワー、露光面、および時間に依存する
  • 露光面は、電球の形状と試料から発光源までの距離に依存

同じ電球、同じ時間ならばできるだけ近くで照射した方が効果が高いようですね。

参考 HYJEIA – AN OPEN SOURCE ULTRAVIOLET DECONTAMINATION SYSTEMHyjeia

オープンソースで低価格を実現したUVGI(紫外線殺菌装置)の事例です。

参考 深紫外線LEDでの悪露なウイルスへの有効性を実証ナイトライダーセミコンダクター株式会社

深紫外線LEDを使用した事例です。

消毒することによるマスクの効果への影響

布マスク・不織布マスクを問わず、洗う場合は洗濯機を使わずに手洗いする必要があると聞いたことがあります。
熱や紫外線で消毒する場合にも同じことが言え、いくら効果があるからと言っても、高い温度で長時間熱したり、強い紫外線を長時間当てたりして、マスクとしての機能が劣化してしまっては元も子もありません。
ウイルスはやっつけながらもほどほどの強さ・時間で行うという微妙な匙加減が必要なのです。

参考 Detrimental effects of physical disinfection on face masksneedlab
抜粋①
One study reported no significant alteration of these filtration properties after using UVGI with dosages as high as ~1000 J/cm2 (12)⁠, which are several orders higher than our proposed dosage. Another study reported that no detrimental effect was observed when using dosages of 176-181 mJ/cm2

needlab.orgのアプローチだとマスクの機能に影響を与えることはなさそうです。

抜粋②
There are no assays are using dry heat, as we intend. The last study that we referenced for the UVGI used moist heat at 60°C and 80% RH for 30 min and observed no significant decrease in filtration capacities of the masks

60℃、80%RHの湿熱30分間でマスクのろ過能力の大幅な低下は観察されなかったとのこと。

これらの結果から、needlab.orgの記事では60℃/30分間をターゲットにしています。

方針の決定

ほとんど冒頭に挙げたneedlab.orgの記事を追っていっただけになってしまいました。
消毒前後のウイルス数は個人レベルでは数えようがなく、作成した消毒器の効果検証もできません。そのため正しいアプローチを採ることがとても大切です。

全くの素人ながら様々な情報を追っていくことで、熱と紫外線という2つのアプローチが採用しやすく、有効性もあることがわかりました。
熱に関しては紫外線と併用することを考慮して56-60℃/30分間以上を目安とし、可能であれば乾熱殺菌でのデータ通り70℃/60分間を目指します。

長くなりましたので、一旦ここまでで区切って、次の記事ではこのアプローチで実際に試作を始めることにします。

続きはこちら
マスク消毒器-消毒器部分の試作

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